トラスティーレ銀座 代表 金井光良 採寸風景

フィッターの技術は、
採寸の正確さではない。

フィッターの技術は採寸の正確さにあると思われがちですが、それは間違いです。

正確な採寸はもちろん必要な技術ですが、それを元にどのように"スーツ"という形に落とし込めるかがフィッターの腕の見せ所です。

たとえば、まったく同じ体型のお客さまが二人いらっしゃったとします。
一人は30歳の外資の保険営業マン。
もう一人は50歳の企業法務の弁護士さん。

間違いなく、私が二人のオーダーシートに書き込む数字は、まったく違うものになるでしょう。
採寸データは出発点にすぎません。
そこから「誰が、何処で、何を叶えるための一着か」を汲み取って、初めて数字が決まります。

もう一つは"体型"の読み取りです。
ゲージ服という基準服を使い、なで肩やいかり肩といった基本的なものから、前後左右の身体の傾きや身体のカーブといった体型のクセを読み取っていきます。
それを元に、補正図に落とし込んでいくのですが、この作業は、"パターン"と呼ばれるスーツの設計図を理解していないとできません。

採寸だけなら、少し練習すれば誰にでもできます。
測った数字を、体型を考慮しながら目的に合わせた形に変換すること。
それが、フィッターの本当の仕事です。

生地とメジャー

縫製工場の持つ技術の差。

日本のオーダースーツの大半は、国内か中国の縫製工場を使用します。工場の技術の違いは、縫製の正確さや丁寧さで語られることが多いのですが、縫製だけを見れば、国内と中国の国ごとの差など、ほとんどありません。

工場ごとの差は、アイロンワークによるクセ取り、イセの量、手仕事ができる職人さんの数など様々な要素がありますが、一言で言えば「自由度の高さ」の違いです。

例えば、ラペル。

ラペルの種類(ノッチドラペルやピークドラペル)はどこの工場でも選べますが、細かいデザインやミリ単位での幅の指定ができない工場がほとんどです。

その理由は、そこに対応したとしても、それを使いこなせるテーラーが少ないからです。

最高の道具と食材があっても、美味しい料理は作れません。それを使いこなすシェフがいて、初めて良いものができる。

スーツも同じです。
優れた工場、生地、そしてそれを料理するフィッターの技術があって、初めて価値のある一着が仕立てられるのです。